テレビ番組『報道特集』で放送された「子の連れ去り」問題に関する事例の考察と、番組内容に対する弁護士からの指摘について、以下に説明します。
番組では、幼少期に連れ去られた2人の子どもの事例が紹介されました。Aさんはアメリカから日本へ連れ去られ、母親から父親の悪口を聞かされたことで20歳まで親子断絶状態にありました。しかし、自立後に自ら父親に再会し、関係を修復しています。
Bさんの事例では、母親の元にいる時は「お父さんに会いたくない」と発言していましたが、後に父親の元へ逃げてきた後は「お母さん嫌い」と言うようになりました。子どもは目の前にいる同居親に依存しているため、その親の意向を忖度して発言してしまう傾向があります。そのため、裁判所や調査官は子どもの「会いたくない」という言葉を安易に鵜呑みにしてはならないという実態が浮き彫りになっています。
もう一つの事例として、ハーグ条約締結前に子どもを連れ去られたアメリカ人のジェフリー・モアハウスさんのケースも紹介されました。子どもが20歳になった際に連絡を試みましたが、子ども側から拒絶されるという悲しい結果に終わっています。長期間片方の親(母親)とだけ過ごすことで、子どもが別居親に対して強い疎外感を抱いてしまうことが原因と考えられ、親子断絶が子ども自身を深く傷つけている現実が示されています。
番組が当事者である子どもの苦しみに焦点を当て、親子断絶が子どものためになっていないと報じた点は評価できます。しかし、番組が解決策として「話し合い」を推奨している点には疑問が残ります。離婚直前の激しく揉めている状態(高葛藤)において、当事者間の話し合いによる解決は極めて困難であり、実際にBさんの母親も番組内で「話し合いは無理だったから連れ去った」と証言しています。
アメリカで連れ去りが起きない最大の理由は、一方の親の同意なく子どもを連れ去ると「誘拐罪」で逮捕されるという厳格な法制度があるためです。一方の日本では、連れ去りが禁止されておらず、事前の取り決めなしに実力行使による別居が開始できるため、連れ去りが横行してしまっています。番組がこの「日米の法制度(逮捕の有無)の違い」を報じなかったことは不十分であり、日本も連れ去りを明確に禁止し、裁判所で面会などの裁定を経た上で別居を開始するシステムを早急に導入する必要があります。
片山ひでのり法律事務所
弁護士 片山栄範
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