共同親権導入に伴う民法改正によって新設される「法定養育費制度」の危険性と、それに伴う過酷な差し押さえの実態について、以下に説明します。
これまでは、養育費の差し押さえを行うには調停や裁判による決定(債務名義)が必要でした。しかし今回の法改正により、一定の要件を満たす法定の最低限の金額(法定養育費)であれば、調停や裁判を経ることなく、また相手への事前の連絡も一切なしに、突然給料を差し押さえることが可能になります。これにより、離婚後に子どもの居場所や安否すらわからず、相手から養育費の請求すら受けていなかった人であっても、ある日突然給料の差し押さえを受ける事態が起こり得ます。
法定養育費の発生時期は「離婚した時」からと明言されているため、離婚から数年経過してから差し押さえが行われた場合、過去に遡って一気に高額な金額(例えば2年分など)を請求されることになります。さらに、養育費の差し押さえは「給料の2分の1」まで可能なため、生活が著しく困窮するリスクがあります。仮に病気等でお金が払えない状況であっても、差し押さえられた状態のまま自ら裁判所に出向いて支払えない事情を証明しなければならず、非常に過酷な制度設計となっています。
この新制度は、裁判を経ずに書類の手続きだけで機械的に差し押さえができるため、法律事務所の事務員などが大量に定型処理するのに向いています。そのため、かつての過払い金請求のように、大量に処理して手数料を取る「養育費ビジネス」が横行する恐れがあります。
また、これまでは養育費の請求をきっかけに「面会させてほしい」と連絡を取る機会が生まれることもありましたが、新制度では連絡すら不要でお金だけを奪えるようになるため、相手とやり取りする機会が完全に失われ、結果として深刻な親子断絶がさらに進んでしまうことが強く懸念されています。
片山弁護士の予想によれば、この法定養育費は生活保護の母子加算などを根拠として「子ども1人につき月額3万円」程度に設定される可能性が高いとされています。もし子どもが2人いて2年分(24ヶ月)を遡って請求された場合、144万円もの金額がいきなり差し押さえの対象となります。
報道では「養育費が取りやすくなる」という側面ばかりが強調されていますが、実際には事前の話し合いすらなく突然多額の給与を差し押さえられる危険なリスクをはらんだ制度です。現在養育費の取り決めをしていない人は、このような事態が突然起こり得ることを十分に認識し、注意しておく必要があります。
片山ひでのり法律事務所
弁護士 片山栄範
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